テンポラリーラブ物語

 日本女性の平均的な背の高さのミナや紀子には、丈がちょうどよくロングに見えても、なゆみには中途半端な丈の長さとなっていた。

 髪もボーイッシュでスカートを穿くとマッチしていない。

 自分でも似合わないと自覚しているのか、ぎこちなさそうに歩いている。

 周りはサイズが小さかったかもなどと慰めているが、似合ってないとは誰一人言わなかった。

 笑顔は見せているが、何度も裾を引っ張り、丈の短いのを気にしているしぐさは、氷室にはおかしかった。

「斉藤、お前スカート似合わないな」

 それを言っちゃおしまいよ、とみんなは氷室に凍りついた視線を投げたが、なゆみははっきりといわれてふっきれたのか「はい、その通りです」と笑い飛ばしていた。

 その行為はなゆみの株を上げた。

 ミナと紀子は何かを確かめ合うかのように顔を見合わせ、それを好意的に受け入れる。

 それがきっかけで、二人はなゆみを受け入れ始めた。

 氷室の否定的な言葉にも負けないなゆみの笑顔が、その場の雰囲気を明るくし、その日はスタートした。

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