テンポラリーラブ物語
2
鍵を持っている氷室は、朝一番に本店のシャッターを開ける役目がある。
朝一番といっても、普通の企業からすれば遅めではあるので、早く来たところで苦にはならない。
それに、昼過ぎにならないと専務は大体来ないし、社長は気が向いたときにだけにしかやってこない。
そして主任と名ばかりだけの役職をもらった氷室は、本店を任されたことで、少しばかりの責任を負わされていた。
それもまたあってもないに等しいものだった。
朝の通勤のスーツ姿が溢れかえった人ごみに紛れ、時折欠伸を出しながら、気怠く職場に向かい、また同じ日々が繰り返されるつまらなさで背筋が曲がる。
やる気のないだらけた気分で歩いていた。
眠たい目をこすり、大きな欠伸を堂々とさらけ出して店の前に来た時だった。
まだ人気の少ない通路、その店のシャッターの前で誰かが立っていた。
誰?
気の早い客か?
氷室がシャッターの鍵をスーツのポケットから取り出し、訝しげにシャッターの前に近づくと、その人物は急にそわそわとしだした。
「おはようございます!」
ハキハキとした大きな声。
ぼーっとしている氷室にはそのテンションは合わなかった。
ちらりとぶっきらぼうに一瞥すると、その人物の背筋がピシッと伸びた。
「あんた誰?」
愛想のない態度が怖がらせたのか、一瞬身を引いたようだった。
鍵を持っている氷室は、朝一番に本店のシャッターを開ける役目がある。
朝一番といっても、普通の企業からすれば遅めではあるので、早く来たところで苦にはならない。
それに、昼過ぎにならないと専務は大体来ないし、社長は気が向いたときにだけにしかやってこない。
そして主任と名ばかりだけの役職をもらった氷室は、本店を任されたことで、少しばかりの責任を負わされていた。
それもまたあってもないに等しいものだった。
朝の通勤のスーツ姿が溢れかえった人ごみに紛れ、時折欠伸を出しながら、気怠く職場に向かい、また同じ日々が繰り返されるつまらなさで背筋が曲がる。
やる気のないだらけた気分で歩いていた。
眠たい目をこすり、大きな欠伸を堂々とさらけ出して店の前に来た時だった。
まだ人気の少ない通路、その店のシャッターの前で誰かが立っていた。
誰?
気の早い客か?
氷室がシャッターの鍵をスーツのポケットから取り出し、訝しげにシャッターの前に近づくと、その人物は急にそわそわとしだした。
「おはようございます!」
ハキハキとした大きな声。
ぼーっとしている氷室にはそのテンションは合わなかった。
ちらりとぶっきらぼうに一瞥すると、その人物の背筋がピシッと伸びた。
「あんた誰?」
愛想のない態度が怖がらせたのか、一瞬身を引いたようだった。