テンポラリーラブ物語
 なゆみが書き終わるとそれを持って、控え室へ案内した。

 部屋の奥をパーティションで区切ってドアを取り付けてある簡単な作りの控え室だった。

「あまりきれいなところじゃなくてごめんね」と言葉を添えてみるが、なゆみは謙遜しているとばかりに、手をひらひらと顔の前でさせて、気にしない態度を見せていた。

 しかし氷室は前日の専務のアレのことも意味しており、知らぬが仏だと苦笑いになっていた。

 控え室に設置されていたタイムレコードになゆみのカードを差し込む。

 そしてそれを壁にかけていたタイムカードのラックの中に入れた。

 続いて自分のを取り出し、タイムカードを押し、またそれを戻す。

「お名前は氷室さんですか」

 なゆみはカードの名前を見て氷室の名前を確かめた。

「そうだったね。まだ私の自己紹介をしてなかった。氷室コトヤだ。一応ここでは主任となっている。よろしく」

「はい、こちらこそどうぞ宜しくお願いします」

 とにかくなゆみの挨拶は元気だった。

 その声の元となる、明るい笑顔も添えて、氷室ににこやかにほほ笑む。

 それを見た時、はっとするものが氷室の体の中を走り抜けた。

 この子、もしや、昨日みたあの子?

 なんとなくそんな気がする。

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