別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「だって簡単に信用出来ないじゃない。また騙されたらどうするの?」

「それはその時によって臨機応変に、別れるなり、やり直すなりしたらいいじゃない」

「そんな簡単に言わないでよ、次に騙されたら私立ち直れないんだからね。それに私が嘘が嫌いな理由を梓だって知ってるでしょ?」

梓は一瞬言葉に詰まったあと、それまでより和らかな口調で言った。

「理沙の気持ちも分からないわけじゃないよ。だけど理沙自身が奏人君を好きなんだからその気持ちに素直になった方がいいと思う。だって奏人君の気持ちだっていつ変わるか分からないんだから。今は理沙だけを好きでいてくれるかもしれないけど、ずっと拒否されていたら彼だって心が折れて他の子に目が向くかもしれない、もしそうなったら理沙は平気なの?」

奏人が他の女性と……考えると苦しくなる。

同時に、昼間見た女性の姿が思い浮かぶ。

モヤモヤとした苦い気持ちしか感じない。

「平気じゃないと思う」

正直に言うと、梓は「ほらね」と言い呆れたように笑った。

「理沙は頑固すぎる。少し頭を柔らかくしな」

「私って頑固なのかな?」

「間違いない」

梓は断言すると、巨大から揚げをパクパクと食べ始める。

もうこれ以上あれこれ言う気は無いみたいだ。

私も黙って、卵焼に手をつける。

かなり駄目だしされたけど、梓と話すと言いたい事が言えるので、すっきりする。

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