別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「レクセルハイツ?」

奏人はそう呟いた直後、顔を強張らせた。

さっきまでは冷たかったけれど、今度は怒っている?

本当にこの女性は、奏人にとってどんな相手なんだろう。

私から見る限り、良好な関係には見えない。

だけど女性の奏人に対する距離感から、相当深い関係だったと思われる。

前にも思ったけど、元カノ?

でもそうだとしたら、奏人がこんなに冷たい対応をするのが不思議で仕方無い。

事情を問い質したいけれど、この場で発言はし辛い。

今回もまた、最後まで蚊帳の外にされるのだろうし。

そう思っていたのだけれど、思いがけないことに女性が私に視線を向けて来た。

ドキリとしながらも、とりあえず挨拶をしようと思い口を開きかける。

「もしかして奏人の今の彼女? よく一緒にいるところを見かけるけど」

女性は私を観察するように眺めながら、奏人に言う。

私は内心混乱しながら、女性の視線から逃げるように目を伏せた。

“よく一緒にいるところを見かける“って言い方が気になった。

私が彼女と会うのは二度目。

だけど彼女の口ぶりからはもう何度も会ってるように感じるのだ。

私、この人のことが苦手だ。

名前すら知らない相手なのに、警戒心のようなものが働いて、関わりたくないと思う。

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