別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「君には関係ない」

奏人は相変わらず冷たい声を出した。

どうやら私のことを、彼女に紹介する気はないようだ。

奏人の拒絶に近い対応に構うことなく、彼女は楽しそうに言う。

「素っ気無いのね、まだ怒っているの?」

「……用件は?」

奏人が苛立ったように言う。

「私の引越しのこととか、いろいろ話があるけど、この子の前じゃちょっとね。ふたりきりで話したいんだけど」

女性は、私の動向を観察するようにしながら言う。

あからさまな邪魔者扱いに、驚いてしまう。

自分が割り込んで来たのに、平気で私を追い出そうと出来るなんて、この人ってどういう感性をしているんだろう。

真面目で大人しそうな見かけをしてるのに、中身は非常識としか思えない。

だから当然奏人が断ってくれると思っていた。

それなのに。

「分かった」

信じられないことに、奏人は女性の要求を受け入れた。
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