別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
唖然とする私に目を向け、奏人が言った。

「悪いけど、ここで解散にしてくれ」

「……え?」

どうして、先に約束していた私を追い返すの?

それに解散って言い方はおかしくない? 

まるで仕事の延長みたい。
ただの同僚と別れるみたい。


私達、新車でドライブに行くんじゃなかったの?

『理沙を一番に乗せたい』って言ってくれたのは嘘なの?

私に話しかける声もさっきまでと全然違う。
優しさや甘さが一切なくなっている。

急変した奏人の態度に、私は動揺を隠せない。

奏人に酷く裏切られたように感じたから。

もう、隠し事はしないって言ったのに。裏切らないって言っていたのに……。

そう何度も言ってくれた言葉も、嘘だったの?
信じられない。

バッグを持つ手が震えてしまう。

奏人を非難したいのに、声が出ない。

恐らく酷い表情をしているであろう私を見て、奏人が嫌そうに眉をひそめる。

同時に、女性の甲高い声がした。

「ねえ、早く帰ってくれない?」

あなたが、邪魔者。

そう言われた気がした。

私は奏人を視界から外し、弾かれるようにその場を逃げ出した。

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