別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
ほんの少しだけ、奏人が追いかけて来てくれるかもしれないと期待した。

その期待も裏切られたけれど。

アパートまでの道を何かに急き立てられるように急ぎ、息を切らせながら震える手で鍵を開け部屋に入った。

靴を揃える余裕もないまま居間に入り、その場にしゃがみ込んだ。

奏人の態度が信じられなかった。


あの女性と訳ありそうだとは感じたけど、奏人があんな風に私を蔑ろにするとは思っていなかったのだ。


奏人は私を大切にしてくれて、一番優先してくれるっていつの間にか思い込んでいた。

口では嘘つきで信用出来ないって言いながら、そんな自信を持っていた。


だって、奏人が凄く優しかったから。
一年間私に嘘をついていたことを真摯に謝って、私の傷を癒そうとしてくれていたから。

だから、私はいつの間にか信じてしまったんだ。

奏人が私に酷いことをする訳がないって。

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