別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
でも……両親を騙した人達の事は、未だに許す事が出来ない。

簡単に騙された私の両親の方が浅はかで愚かだって言う人も多くいるけれど、私はどうしても納得出来ない。

だって父も母も親切心で、困っている人を助けようとしただけなんだから。

騙される人が悪いんじゃ無い。
嘘をついて騙す人が悪いに決まっている。


だから、私は嘘つきが大嫌いだ。
どうしても信用する事が出来ない。

どんなに条件が良くたって、奏人とやり直す事なんて考えられない。


「私は信用出来る人と結婚して安心して暮らしたい。1年も人を騙せる様な人となんて論外だから。玉の輿だとしても無理」

はっきり宣言すると、梓は苦笑いを浮かべて言った。

「頑な過ぎな気もするけど、嫌なものは仕方ないからね。かなりもったいないんだけどね……」

「もったいなくなんて無いから。嘘つき男なんて私には必要ないし!」

強気で言い放ち、勢いでビールを一気に飲み干した。

奏人なんてもう要らない。
あんな人……もう二度と会いたくない。




そう思っていたはずなのに、梓と別れた途端スマホが気になってバッグから取り出した。

着信を確認する。誰からも連絡が来ていない……奏人からも。

昨日は嫌になる位しつこく電話して来たくせに、今日は一度も連絡が無い。

私の事はもう見切りを付けたのかな。

付きまとわれたく無いから、丁度良かった。


それなのに……夜ベッドに入ると胸がしめ付けられて、涙が止まらなくなる。

起きている時は怒って、寝る時は泣いて。
私は結局1日中、奏人の事を考えていた。
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