別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「私、奏人と出合った頃、実家で問題が有って落ち込んでいたの。両親が詐欺被害みたいなものに遭ったんだけど、親戚の人達は犯人じゃなくて騙された両親が馬鹿だって責めた。だから悲しくて落ち込んでた。そんな中でも奏人は優しくて一緒にいると安心できた。絶対に人を騙したりしないと思った。だから真実を知った時、本当にショックだったの」

「ごめん、俺が馬鹿だった。本当に理沙を傷付けてばっかりだな」

奏人が辛そうな顔をする。
後悔しているんだと思う。

「うん。本当に辛かった。だけどね、気付いたの。確かに身分とか大事なことで嘘を吐かれていたけど、過ごした日々が全て偽りだった訳じゃないって」

奏人との日々が蘇る。

本当に幸せだった。この人とずっと一緒にいたいと思った。

過去も今も。

そう思えたのは、いつでも奏人が私に心から向き合ってくれていたからじゃないの?

心を閉ざした私に、辛抱強く寄り添ってくれたからじゃないの?

そんな奏人を失いたくない。
これからも一緒にいたい。

「もう忘れる。名前が違っていても奏人は奏人だから」

「理沙、ごめん……ありがとう」


奏人の声が震えている。
私は、彼の体をそっと抱きしめた。
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