別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「ねえ、仕事はどうするの?」

「それなんだよね」

私もトーンダウンして、溜息を吐く。

目下一番の問題は会社への報告だ。

引越ししたら、私も奏人も会社に住所変更届けを出さないといけない。

そういった個人情報は公開されないことにはなっているけど、絶対に知られないという保障はない。

もし、噂が回ってしまって部長あたりから問い質されたら、結婚前提の同居と説明することになるけど、その場合私は営業一課から異動になるかもしれない。

さくら堂では社内恋愛は問題ないけれど、結婚したふたりを同じ部署にはおいておかない。

同じ部署のふたりが結婚した場合、どちらかが他の部署に異動になる。

「私はもう少し今の仕事を続けたいんだけどね。松島さんの事をのぞけば居心地が良いし、奏人のフォローの仕事はこれからも私がやりたいし」

「営業一課は人間関係良好だもんね。でも奏人君のフォローをしたいってのはただのヤキモチでしょ? 他の子が彼にぴったりくっついてあれこれ世話を焼くのが嫌なんでしょ?」

半笑いで言われてしまったけど、その通りなので、言い返せない。

黙ってサワーを飲む私に、梓が呆れた様子で言う。
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