別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
結末
衝撃だった朝美さんの突撃から一週間が過ぎ、漸く落ち着きを取り戻した私達に、ちょっとした事件が起きた。
突然、社長からの呼び出しがかかったのだ。
今、私は慌てふためきながら、奏人に連れられ社長室に向かっているんだけど、気が重くて仕方ない。
だって、私は奏人と違って、社長とまともに会話をしたことがない。
一般社員の私は、仕事でも社長と直接関わる機会がないからだ。
だから今回の呼び出しは、仕事とは無関係のプライベートの事。
奏人と付き合ってることについて、何か言われてしまうんだろうと予想できてしまう。
「理沙、そんな固くならなくていいから」
緊張のあまり顔を強張らせる私に、奏人がのん気な声をかけて来る。
「無理だよ。何言われるのか凄く不安」
だって、もし「君は奏人には相応しくない」とか言われてしまったらどうすればいいの?
奏人は社長候補だから、その奥さんになる人に求められる条件は厳しいはずだ。
そして、私はその条件に不足している可能性が高い。
仕事も学歴も普通で特筆するところがないのに、実家が貧乏と言うマイナス面があるのだ。
自信を持って奏人の恋人です。と言えるアピールポイントが私には無い。
項垂れる私に、奏人が宥めるように言う。