別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
奏人と並んで座ると、社長はテーブルを挟んだ正面に腰掛けた。

直ぐに奏人が切り出した。

「それで、どんな用件ですか?」

今気付いたけど、奏人の言葉遣いもあまり丁寧じゃない。

部長に対するときの方が、よっぽど気を遣っているみたいだ。

養子とはいえ、親子関係だから気さくになるのかな?

「今後の人事のことで言っておきたいことがある」

「中瀬さんを同席させる理由は?」

「お前がうちの社員と交際していると聞いたから、その相手を一度見てみたくてな」

「やっぱりな、そうだろうと思った」

奏人が呆れたように言う。
口調も更に砕けたものに変化した。

ふたりの気楽な雰囲気とはうらはらに、私は不安が止まらない。
社長は、誰から交際のこと聞いたんだろう。

「急に引越すって言い出したのは、彼女と住む為か?」

もしかして、社長は同棲に反対なのかな?
表情からは読み取れなくて恐い。

だけど奏人は躊躇いなく答える。

「そうだけど」

私とは違い、「それが、何か?」 とでも言い出しそうな堂々とした態度。

社長は一度頷いた後、ちょっと身を乗り出した。
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