別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「結婚するのか?」

この問いには、さすがの奏人も直ぐには答えられないだろうと思ったのだけど、微塵も迷う気配が無かった。

「ああ。もうプロポーズ済みで、OKも貰ったから」

奏人はそう言いながら、幸せそうに微笑んで私を見つめて来る。

甘く、優しいその眼差しは、ふたりきりの時には嬉しいのだけど、この場では困ってしまう。

社長になんの相談もなく結婚を決めた形になってしまった上に、この悪びれない態度。

怒られないのかな?

恐々と社長に目を向ける。

何か言われてしまうのかと、ドキドキしていると、さらりと言われた。

「そうか。分った、だが結婚したら中瀬さんには異動してもらうことになるな」

え……それだけ?

身構えていただけに拍子抜けしてしまう。
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