別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
仕事は順調に進み、その合間に準備を進めていた引越しも無事に完了した。

家具と家電はだいたい新しく揃えたし、私はアパートを引き払って必要なもの全てを新居のマンションに運び終えた。

奏人の洋服や趣味のものなど、細々したものはまだ移動できていないけど、とりあえずは生活出来るようになった。

新しいマンションは凄く快適。

綺麗だし、便利だし、なにより大好きな人と一緒なのだ。

奏人より先に帰って夕飯を作るのも、お風呂の用意をするのにも幸せを感じる。

梓に言ったら「そんなの最初だけよ」なんて言われてしまったけど。



夜、十一時半。

のんびりテレビを見ていると、玄関で鍵の空く音が聞こえて来て、私は立ち上がりリビングの扉を開け玄関に向かった。

「お帰りなさい!」

抱きつきはしないけどそれに近い勢いの私を見て、奏人はクスリと笑う。

「ただいま」

「ご飯出来てるよ」

「ああ、ありがとう」

奏人は一緒に暮らしても、感謝の言葉を忘れたりしない。

忙しくても私を気遣ってくれる。

用意して有ったビーフシチューを温めて、その間にサラダやパンの用意をする。

「はい、どうぞ」

湯気の立ったビーフシチューをテーブルに置くと、奏人は「うまそう」と言い、お代わりまでしてくれた。

好きな人が自分の料理を美味しそうに食べてくれるのって、凄く嬉しい。

ニコニコしていると、奏人も笑顔になった。
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