別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
社長の話が終わり、乾杯をし、懇親会の時間になった。

奏人の周りは直ぐに人でいっぱいになる。

一緒に仕事をした開発部の人達。
工場の人達。

自分が関わった仕事ってこともあるだろうけど、皆が奏人をお祝いしてくれている。

「理沙も行きなよ、早くおめでとうって言いたいんでしょう?」

「うん、でも割り込むのも悪いし、もうちょっと落ち着いてからにしようかな」

「なんで遠慮してるの? アシスタントなんだから、真っ先に駆けつけてもいいのに」

梓が不思議そうに言う。

「奏人って途中入社だし、立場的なこともあって仲良い人が社内にいないんだよね。これを機会に親しい同僚が出来たらいいなと思って」

「優しいね、この前までは嘘つき男!って騒いでたのに」

梓がちょっと意地悪そうに笑って言う。

「あの時は本当に奏人のこと酷いって思ってたから……でもやっぱり好きだし、あの時嘘を言って一番苦しんだのは奏人なんじゃないかなって……一緒に仕事したり生活をしている内にそう感じるようになったの」

「ふーん、理沙も少し考え方が柔らかになったみたいだね」

「今でも人を騙す人は大嫌いだけどね」

「分った、分った。じゃあ奏人君が落ち着くまで飲もうか」


梓はそう言いながら、料理とお酒が並ぶテーブルに私を促す。

気持ちがすっきりしたから、私もお腹がぺこぺこだ。

< 196 / 208 >

この作品をシェア

pagetop