別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「北条? お前はまた俺の邪魔をしに来たのか」

「滝島課長、悪酔いされているようですね、別室で休憩した方がいいんじゃないでしょうか?」

奏人が冷静な声で答える。

それが気に障ったのか、滝島課長はヒステリックに叫んだ。

「お前、いい気になるなよ!」

奏人が何も言わないでいると、滝島課長はヒートアップして、騒ぎを眺めている社員達に向かって叫び出した。

「お前ら知ってるか? この北条はな、アシスタントの中瀬理沙と出来てるんだよ。公私混同のだらしない男だ。こんな奴が部長で許されると思うか?」

周囲で驚いたような騒めきが広がり、私にも視線が集中する。

最悪……こんな所でプライベートなことを暴露するなんて。

滝島課長への怒りが爆発しそうだったけど、彼と同類になって暴れるわけにはいかない。

その気持ちだけで耐えていると、奏人の冷ややかな声がした。

「言いたいことがそれだけなら、別室に案内します」

奏人の言葉と同時に、警備員が現れ、課長の両脇を抱える。

「な、何だ! お前達は……」

「丁重に案内してくれ」

奏人がそう言うと、警備員は課長をひっぱりホールの扉に向かって行く。

乱暴じゃないけど、課長が喚いても手を離さない。

派手に騒ぎたてながら、課長はホールから姿を消した。

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