別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「中瀬さんの異動も滝島と同時期かもね、昨日の事でもうここには居られないだろうし」

「……やっぱりそうなりますよね」

「そうよ。でも行き先は本社内だろうから、そんなに悲観することないわ」

「もしかして、私の異動先も知ってるんですか?」

「さあね」

松島さんは私の質問をかわすと、座っていた椅子から立ち上がった。

「そろそろ仕事に戻るわ。最近忙しいのよ」

「はい、あの、滝島課長のこと教えてくれてありがとうございました」

「中瀬さんは当事者だから一応ね、私が言わなくても北条君から情報貰えるとは思ったけど」

「……彼とのこと、何でもないって嘘を言っていてすみませんでした」

私の言葉に、松島さんはちょっと驚いた顔をしたあと、ニヤリと笑った。

「別に。嘘だって分かってたわ。中瀬さんは嘘が下手だし、北条君が誰を好きかなんて態度で分ったし」

「え、でも松島さんは……」

散々、奏人にアピールしていたと思うんだけど。

「分かってたけど公表していないうちはチャンスがあるかと思って。滝島に復讐するには北条君は頼りになると思ったからね。でももうちょっかい出さないから安心していいわよ。私は仕事に集中するし、昨日の様子を見たら割り込む気も失せるわ」
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