別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~


十二月も半ばを過ぎた土曜日。

私達は、奏人の生まれ育った実家に向かっている。

「理沙、そんなに緊張するなよ」

助手席で固くなる私に、奏人が苦笑いを浮かべて言う。

「そんなこと言われても」

緊張するなって方が無理だと思う。

だって、奏人の実の両親に会うのは初めてで、それなのに奏人は結婚の報告をするって言うんだから。

「やっぱり初対面で結婚の話は非常識じゃない? もう少し馴染んでからのほうが……」

「駄目」

奏人は私の申し出を考える間もなく却下する。

「どうして?」

「だって一刻も早く理沙と結婚したいし」

「そんな急がなくてもいいでしょ? もう一緒に住んでるんだし」

奏人の両親からの印象が悪くなるくらいなら、もう少しゆっくりと、世間の常識に則った流れにのりたい。

だけど、奏人はあからさまにがっかりとした様子で、悲しそうに私を見つめる。

「理沙は俺と結婚したくないの?」

「え、そんな事ないよ……私だって奏人と早く結婚したい」

「じゃあ、問題ないだろ?」

奏人はころっと態度を変えご機嫌に言う。

さっきの悲しそうな顔は演技?
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