別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~


翌日。

出社すると、部長に席替えを命じられた。

行き先は窓側の奏人の隣の席。

奏人のフォロー係になったから席替えはあり得るかもと予想していたので、それ程驚かなかったけど、周りの視線が少し辛い。


みんなは私が奏人の下に付く事を今知った訳だし、そもそも、どうして中瀬さんが社長の息子のフォローに選ばれるの? って驚いているんだと思う。

それらに気付かないふりをして、席を移る準備をする。

パソコンの電源を外して、机の上の物を引き出しに仕舞う。

引き出しはどの席も共通の作りだから、このまま交換してしまおう。

あまり荷物を持つのが好きじゃない私は私物も殆ど置いてないから、それ程手間取る事なく移動の準備が終わった。

後は机の上を綺麗にしてと……常備しているシートクリーナーで拭いていると、松島さんが近付いて来た。

「中瀬さん、手伝おうか?」

松島さんが、さっきからずっと私の様子を伺っていたのには気付いていたから、心の準備も出来ている。

「ありがとうございます。でも後は拭くだけなんで大丈夫です」

笑顔で返事をすると、予想通り松島さんは奏人の事を言って来た。

「中瀬さんが北条君のアシになるなんて思わなかったわ」

「そうですね。私も驚いているんですよ」

「いつ決まったの?」

「私が聞いたのは昨日です。帰る間際に部長に呼ばれて」

想定内の質問なので淡々と答えられる。

昨日あれだけ奏人を気にしていた松島さんだから、絶対に根掘り葉掘り聞かれると思っていた。
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