別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「どうして中瀬さんが選ばれたのかしら?」

松島さんは探る様な目をして言う。

もしかしたら、私が自らアピールして奏人のアシスタントになったと思ってるのかな?

どうやら私はガッついた婚活女子のイメージらしいし。

誤ったイメージを払拭したいけど、ここで長々語っても、効果は殆ど無いだろう。

「私も理由は分かりません。部長の指示で事前に打診もありませんでしたから」

あくまで部長の指示ってところを強調した。

「それはさっきも聞いたけど、部長が中瀬さんを選んだ理由は開示されないから、みんなも不思議がってるわよ」

みんなが昇進でもない部内の人事異動にここまで関心を持つのは、自分こそが奏人と組みたかったからなんだろうな。

今の奏人は、イケメンで将来の地位がほぼ約束されたハイスペックな男。

普段は「年下は興味ないわ」なんて言ってる松島さんこそが、実は一番狙っていたりして。

それからも松島さんの質問責めは続いたんだけど、突然それがピタリと終わった。

どうしたのかと机を拭くために俯いていた顔を上げて、静かになった理由を理解した。

松島さんの隣に、爽やかな微笑みを浮かべた奏人が居たから。
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