別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
部長と課長と奏人と私。
四人だから、自然と二組に別れての移動になった。

私の隣には、当然の様に奏人が居る。

随分と機嫌が良さそうだ。

私はいろいろと周りに気を遣って、普段よりずっと強い緊張を感じ疲れているって言うのに。

私の憂鬱な溜息に気付いたのか、奏人が気遣う様に声をかけて来る。

「理沙、そんなに急いで追いかけなくていいからな。行き先は分かっているから部長達を見失っても大丈夫だから」


基本的にお弁当持参の私は、会社近辺のランチ事情に詳しくない。

ビルを出て部長が駅と反対の方向に進んで行く後を追っているけれど、どこに向かっているのか予想もつかない。

部長も課長も歩く速度が速いから、追いつくのが大変だ。

そう確かに思っていたし、奏人は敏感に私の気持ちを察してくれたみたいだけど……。

「そこじゃないよ……」

どうせ気を遣ってくれるなら、このランチ自体を上手く断って欲しかった。

奏人が怪訝な表情になる。

「そこじゃないって?」

「部長と一緒にランチなんて休憩にならないよ。奏人が余計な事言うからこんな事に……」

私の愚痴を聞いて奏人は戸惑った様子で言った。
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