別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
でも課長はニコリともせずに、返事をした。

「そうですか。それにしてもとても親しそうに見える……まるで昔からの知り合いの様だ」

なんだか、課長の言葉に棘のようなものを感じる。

課長は奏人の事を良く思っていないのかな?

私との関係も疑っている様な発言をしているし、なんだか不安になる。

奏人は気にしていないのか、ニコニコしているけど。




天せいろは大して待つことなく運ばれて来た。

部長がおすすめするだけあって、凄く美味しい。

天ぷらはサクサクだし、お蕎麦はツルツルと喉越し良く、上品な味がする。
特に海老天の身の大きさには感動だ。海老好きとしては堪らない。

流石二千五百円だわ。最高に美味しい。

黙々と食べ続けていると、奏人の声が聞こえて来た。

「中瀬さん」

隣に目を向けると、にこやかな表情の奏人はと視線が合う。

「美味しそうだね」

「……え?」

「まだ手を付けてないから、良かったらどうぞ」

ちょっと困った様に言う奏人に、私は唖然としてしまった。

だって、同僚にいきなり食べ物をあげるって変じゃない?

奏人は私が海老大好きなのを知っているから、お裾分けしてくれようとしているんだろうけど、ここには部長も課長もいるのに。

奏人って、私達の関係を隠す気あるのかな?

「はい」

焦る私を他所に、奏人は堂々と私の皿に海老を置く。

「あ、ありがとうございます……」

ここで文句を言って騒ぐ訳にはいかないから、大人しく頂いたけれど、こんな事は今後は止めるように話し合う必要がある。

もっと気を付けて行動してって。
じゃないと、私の精神衛生良くない。

周りにも何て思われるか……と心配していたら早速課長に冷やかに突っ込まれてしまった。

「まるで恋人同士のようですね」

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