別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「ここだけの話、滝島課長って部長とかなり不仲らしいわよ」

私は思わず首をかしげた。

お昼の時、ふたりが不仲な感じはしなかったけど。

「そうは見えないですね……」

「それは中瀬さんの観察が甘いのよ。ふたりが言い合いしている所は結構目撃されてるわ」

私の呟きを、松島さんは真面目な顔をして否定する。

それにしても、言い合いを結構目撃されているなら、“ここだけの話”とは言えないんじゃ。

松島さんってよく“ここだけの話”って言うけど、口癖みたいなものなかな。

そんな事を考えていると、松島さんは聞きもしないのに詳細を語ってくれた。

「滝島課長ってね、仕入先にかなり厳しくて、利益にならない会社はあっさり切り捨てるの。長年の取引先で過去にヒット商品を作ったことがあるような所でもね、意外でしょう?」

「いえ、遠慮なく意見を言うイメージがあるので、意外ではないです」

私はエレベータの中でのことを思い出しながら、返事をする。

ろくに会話をした事もない他課の私に、『公私混同は不快だ』なんて面と向かって言うくらいだ。
相当自己主張が激しい人なのだと思う。

「あら、見抜いてたの? 中瀬さんって洞察力あるのかしら?」

松島さんは目を丸くして言う。

エレベータでの事を言うと面倒な事になりそうなんで、「なんとなくですけど」と誤魔化した。

< 65 / 208 >

この作品をシェア

pagetop