別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
奏人は私と机を挟んだ正面に座ると、スーツの上着を脱いでネクタイを少し緩める。

「仕事忙しそうだけど、大丈夫なの?」

今日殆ど席にいなかったから気遣って聞いてみると、奏人は嬉しそうに顔をほころばせた。

「平気。理沙との約束の方が優先」

優先って言われると、とても大切にされているように思えて嬉しくなる。

だけど今の奏人との関係でその気持ちを態度に出す訳にはいかないから、素っ気無く言う。

「そう。まだ何も注文してないんだけど、どうする?」

「……俺は何でもいいから、理沙が好きなものを頼んで」

「分かった」

少しがっかりした様子の奏人を見ると、胸がざわめく。

奏人に対して、私は相変わらず態度が一貫してない。

嘘を許せなくて責めたくなるのだけれど、嫌いにもなれない。

突き放せないのに、割り切って受け入れることもできないのだから、我ながら面倒くさいと思う。

上の空で適当に料理を決めて、オーダーする。

それ程待たずに、湯気を立てた料理とお酒が運ばれて来たので、私は早速疑問をぶつけた。

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