別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「適わないな……理沙の言う通り、さくら堂の社長の椅子にそれ程関心は無いよ。でも決めた以上は努力する義務があると思ってる」

「義務?」

その言い方だと、何かの交換条件でさくら堂に来たように聞こえるけれど……。

疑問に感じたその時、松島さんから聞いた話を思い出した。

「奏人がさくら堂に来ることを決めたのは、小林製作所のことと関係があるの?」

「え?」

「お昼休憩の後に聞いたの。滝島課長が小林製作所との取引を切ろうとしたけど、結局上手くいかなかったってことを」

口にすると、間違いないように思えてきた。

奏人は小林製作所が取引を切られて潰れてしまうのを防ぐ為に、さくら堂で働く決心をしたんだ。

社長の後継者候補となる事が、小林製作所との取引を続ける条件だった。

私の予想は当たったようで、奏人は驚いた表情をしながら頷いた。

「驚いたな。理沙がここまで鋭いとは思わなかった」

「え……」

奏人が何気無く口にしたであろうそのひと言が、なんだかとても気に障った。

その言い方だと、まるで私が何も気づかない馬鹿だと思ってたって言ってるみたいじゃない?

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