別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「滝島課長の言う通り、利益にならない仕事を続けていくより、別の道を探したほうがいいのは分かっていたんだ。無理に続けてもいずれは倒産する可能性がある。そうなれば各方面に迷惑をかけるし家族の生活も立ち行かなくなる。でも、あの小さな工場でずっと働いていたい気持ちが大きくてなかなか決断出来なかった」

「奏人は実家の仕事が好きだったんだね」

「そうだな。でもこれからはさくら堂の仕事を頑張るよ。自分で決めたことだからな」

奏人は自分自身に言い聞かせるように言う。

小さな工場だとしても、自分達で一から企画して製造するその仕事を奏人はとても気に入っていたんだろうな……でも、今はさくら堂の仕事の責任を果たそうとしているんだ。

「これで俺が北条になった経緯はだいたい話したけど、他に何か気になることはある?」

「ううん、もう大丈夫。話してくれてありがとうね」

今日の奏人は本当のことを話してくれたと思う。

奏人の仕事に対する想いのようなものも知れた。

つきあってる時にいつも感じていた誠実さを、今夜の奏人から感じた。

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