嘘つきには甘い言葉を
週の初め、大学で走り寄ってきた和香には水無月隼人と付き合うことになったと報告した。
自分の事みたいに喜んでくれた和香に心が痛んだけれど、「嘘はつき通せ」と言った水無月隼人を思い出す。
そうだよ、私はもう一年も前に選んでた。
龍君が和香に一目ぼれした時辛くて毎日泣いて、それでも自分の気持ちは伝えずに二人を応援すると決めたんだ。龍君は友達。友達の幸せを願うの。今はそれが、私の幸せではなくても。
豆腐ハンバーグにコールスローサラダ。
「これ本当に豆腐入ってんのか? 全然わかんねーな……」
真剣な顔をしてハンバーグの断面を眺めながら一つ一つ口に入れる様子に笑みが零れる。
「ごちそうさまでした」と箸を置く時にはいつも通りお皿の上は人参一つ残っていなくて、「お粗末様でした」声が弾んでしまった気がする。
お互いが本当に好きなわけでもないのに、水無月隼人との恋愛ごっこは悪くはなかった。
毎日水無月隼人が大学やバイト先に迎えに来て私の作ったご飯を並んで食べる。二人きりでいても別に手を出されることはない。
美紀もバイトの同僚も水無月隼人の事を私の彼氏だと思っているけれど、私はもう否定しなかった。
片づけを終わらせてベッドにもたれて腰かける。5畳半の私のマンションは、部屋の半分をベッドに占領されているから、小さなテレビとベッドの間には1メートルもない。
その隙間にちゃぶ台レベルのテーブル。マンションにしてはキッチンが広くてガスコンロは2つあるし、それなりの調理台もあることが気に入ってここにしたけれど、二人で過ごすには狭い。
引っ越した時には毎日誰かと二人で過ごすことなんて想像も出来なかった。いつも通りタブレットとにらめっこしている水無月隼人は私と一緒にいて楽しいとも思えないけれど。
もしかしたら世間の恋人同士ってこんなものなのかもしれない。
お互いが好きで仕方なくて一緒にいるカップルなんて全体の半分もいないんじゃないかな。
そうしてどちらかが飽きたら別れていく。
私が水無月隼人と一緒にいる理由は、もう脅されているからじゃなくなっている気がしていた。
自分の事みたいに喜んでくれた和香に心が痛んだけれど、「嘘はつき通せ」と言った水無月隼人を思い出す。
そうだよ、私はもう一年も前に選んでた。
龍君が和香に一目ぼれした時辛くて毎日泣いて、それでも自分の気持ちは伝えずに二人を応援すると決めたんだ。龍君は友達。友達の幸せを願うの。今はそれが、私の幸せではなくても。
豆腐ハンバーグにコールスローサラダ。
「これ本当に豆腐入ってんのか? 全然わかんねーな……」
真剣な顔をしてハンバーグの断面を眺めながら一つ一つ口に入れる様子に笑みが零れる。
「ごちそうさまでした」と箸を置く時にはいつも通りお皿の上は人参一つ残っていなくて、「お粗末様でした」声が弾んでしまった気がする。
お互いが本当に好きなわけでもないのに、水無月隼人との恋愛ごっこは悪くはなかった。
毎日水無月隼人が大学やバイト先に迎えに来て私の作ったご飯を並んで食べる。二人きりでいても別に手を出されることはない。
美紀もバイトの同僚も水無月隼人の事を私の彼氏だと思っているけれど、私はもう否定しなかった。
片づけを終わらせてベッドにもたれて腰かける。5畳半の私のマンションは、部屋の半分をベッドに占領されているから、小さなテレビとベッドの間には1メートルもない。
その隙間にちゃぶ台レベルのテーブル。マンションにしてはキッチンが広くてガスコンロは2つあるし、それなりの調理台もあることが気に入ってここにしたけれど、二人で過ごすには狭い。
引っ越した時には毎日誰かと二人で過ごすことなんて想像も出来なかった。いつも通りタブレットとにらめっこしている水無月隼人は私と一緒にいて楽しいとも思えないけれど。
もしかしたら世間の恋人同士ってこんなものなのかもしれない。
お互いが好きで仕方なくて一緒にいるカップルなんて全体の半分もいないんじゃないかな。
そうしてどちらかが飽きたら別れていく。
私が水無月隼人と一緒にいる理由は、もう脅されているからじゃなくなっている気がしていた。