嘘つきには甘い言葉を
「心配してくれてありがと」龍君に微笑む。こうして私は一つ一つ嘘を重ねていく。
でもこの嘘は自分の為だ。
何だか前向きな気持ちになる自分が可笑しい。
「先に始めちゃう?」
店員さんを呼ぼうと襖を開けたら、視界が長い足で塞がれた。
そのまま視線を上げていくと見慣れた端正な顔が目に入る。隼人さんの視線は龍君に向いていて「遅くなってごめん」と私の頭を撫でてきた。
頭に置かれた手が温かくてドキドキする。
出会った日以来手は出してこない隼人さんだけど甘い場面がないわけじゃない。触れられることはあってもそれ以上は進んでこない。
龍君の名前を出したら私が拒めないことも知っているくせにどうして? もしかして大切にされているのかな。
なんて、あるわけないよね。
続いてパタパタと騒がしい足音が聞こえてきて「先生に捕まっちゃって、ごめんっ」と和香が顔を出した。
「あ、こんばんは」和香は隼人さんに頭を下げる。
「こんばんは、和香ちゃん」隼人さんは外用の顔をしている、気がする。
この一週間傍にいて、隼人さんはどうやら二面性があるんじゃないかと感じる時がある。
私には偉そうだし意地悪だし……でも美紀も含めてサークルの中では王子様みたいに優しくて格好いいなんて言われている。
今日の隼人さんは王子様でいくらしい。
「「カンパーイ」」
4人でグラスを合わせる。龍君と隼人さんが揃うなんて、何か変な感じ。
「こないだは本当にすいませんでした。こいつが邪魔しちゃって」
隣に座った和香の頭をぐりぐりしながら龍君が隼人さんに話しかける。
「全然、大丈夫だよ。おかげで桜のことよく知れたような気もするし」
意味深な返答をする隼人さんだけれど、龍君は気にする様子もない。
よく知れたって言うか、あれが初対面なんだけどね……。
「小さい頃の桜ってどんな風だった?」尋ねた隼人さんに「私も知りたーい。小さなころから桜ちゃんって面倒見がよかったの?」と和香がかぶせてくる。
「小学生の頃は応援団長なんかもやってたんですよ。立候補したんじゃなくて、誰もやりたいって奴がいなかったから押し付けられた感じでしたけど。すっげー真面目に練習してて。あの頃から女友達には頼られてたよな」
確かに小中学生の頃はそんな感じだった。だけど高校生になったら女の子は恋愛話ばかりするようになって、置いて行かれたような気がする。
「そうかな。よくわからないけど」
私の気のない返事に龍君が「そうだぜ。中学の時のあの話、有名だもんな」といたずらっぽい笑顔を見せた。
「何?」
「何なに?」
食いついてきた二人の前で手を振って「ちょっと、変な事言うのやめてよ」と慌てて龍君を黙らせる。V5でも未だに出るあの話、恥ずかしいからやめてよ。
でもこの嘘は自分の為だ。
何だか前向きな気持ちになる自分が可笑しい。
「先に始めちゃう?」
店員さんを呼ぼうと襖を開けたら、視界が長い足で塞がれた。
そのまま視線を上げていくと見慣れた端正な顔が目に入る。隼人さんの視線は龍君に向いていて「遅くなってごめん」と私の頭を撫でてきた。
頭に置かれた手が温かくてドキドキする。
出会った日以来手は出してこない隼人さんだけど甘い場面がないわけじゃない。触れられることはあってもそれ以上は進んでこない。
龍君の名前を出したら私が拒めないことも知っているくせにどうして? もしかして大切にされているのかな。
なんて、あるわけないよね。
続いてパタパタと騒がしい足音が聞こえてきて「先生に捕まっちゃって、ごめんっ」と和香が顔を出した。
「あ、こんばんは」和香は隼人さんに頭を下げる。
「こんばんは、和香ちゃん」隼人さんは外用の顔をしている、気がする。
この一週間傍にいて、隼人さんはどうやら二面性があるんじゃないかと感じる時がある。
私には偉そうだし意地悪だし……でも美紀も含めてサークルの中では王子様みたいに優しくて格好いいなんて言われている。
今日の隼人さんは王子様でいくらしい。
「「カンパーイ」」
4人でグラスを合わせる。龍君と隼人さんが揃うなんて、何か変な感じ。
「こないだは本当にすいませんでした。こいつが邪魔しちゃって」
隣に座った和香の頭をぐりぐりしながら龍君が隼人さんに話しかける。
「全然、大丈夫だよ。おかげで桜のことよく知れたような気もするし」
意味深な返答をする隼人さんだけれど、龍君は気にする様子もない。
よく知れたって言うか、あれが初対面なんだけどね……。
「小さい頃の桜ってどんな風だった?」尋ねた隼人さんに「私も知りたーい。小さなころから桜ちゃんって面倒見がよかったの?」と和香がかぶせてくる。
「小学生の頃は応援団長なんかもやってたんですよ。立候補したんじゃなくて、誰もやりたいって奴がいなかったから押し付けられた感じでしたけど。すっげー真面目に練習してて。あの頃から女友達には頼られてたよな」
確かに小中学生の頃はそんな感じだった。だけど高校生になったら女の子は恋愛話ばかりするようになって、置いて行かれたような気がする。
「そうかな。よくわからないけど」
私の気のない返事に龍君が「そうだぜ。中学の時のあの話、有名だもんな」といたずらっぽい笑顔を見せた。
「何?」
「何なに?」
食いついてきた二人の前で手を振って「ちょっと、変な事言うのやめてよ」と慌てて龍君を黙らせる。V5でも未だに出るあの話、恥ずかしいからやめてよ。