嘘つきには甘い言葉を
「ありがとう。ごめんなさい……」
やんわりと隼人さんの胸を押して顔を上げる。触れそうな距離にある艶やかな唇は、いたずらっぽく弧を描く。

「もう龍之介に嘘つく必要はなくなったんだ。じゃあ、お前はどうする?」

どうするって……?何を?

続く言葉はないから私は眉を寄せて考える。……そっか、完全に忘れてた。
無理して隼人さんと一緒にいなくてもよくなったんだ。無理して……るのかな、私。
一緒にいると楽しくて、この1ヶ月でいない方が不自然になった。だけどこれは恋ではなくて……友情? それも

ちょっと違う気がする。
上手い言葉が見つからなくて黙りこんだ。
もう会いたくないって言ったらここで終わりなのかな。
どうしてだろう……私、簡単に手を離せない。

「別に急がねーよ」言葉とは反対に強く抱きしめられて、私の頬は彼の鼓動と体温を感じる。この場所は心地よくて、私はその一言にまた甘えてしまう。
いつかは心を決めなくちゃならないのに、また目を逸らした……。

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