嘘つきには甘い言葉を
準備にすっかり手間取って、M駅についたらすっかり夕方だった。
「イベント5時までだよね。急がなきゃ」
バクバクする心臓に落ち着け、落ち着けと言い聞かせる。
遠くに見えたステージまでの距離はあっという間で、震えだしそうな足で地面を踏みしめる。
「私達はここまでね」
V5に背中を押されて、私はステージ横の受付に声をかけた。
「あの……まだ間に合いますか……?」
「はい?」と顔を上げた女の子は、見たことのある顔をしている。
トレードマークなのか今日もツインテール。猫目のあの子だ。
私を見つめて数秒、素っ気なく「どうぞ」とステージまでの道を開いてくれた。
何か言いたかったけれど、言葉は見つからなかった。
これからの私を見ていてくれれば、気持ちは伝わる気がした。同じ女の子として。
息が苦しくて階段が上手く登れない。
心臓が破裂しそうな思いでステージに立つ。足が地についているのかどうかすらわからなくなる。
マイクを握った中性的な男性が近づいてきて、私を見て少し眉を上げ、すぐに笑顔になった。
「本日最後の告白をしに来てくれた女の子に拍手―‼ お名前は?」
「春野……桜です」
「桜ちゃんね、それでは早速告白してもらいましょう。どうぞ」
渡されたマイクはずしりと重くて、私は震える手で落とさないようにするのが精いっぱい。
人ごみをかき分けて和香と龍君が目の前に来たのが目に飛び込んできた。
「桜ちゃん、頑張って!」
和香が涙を浮かべて私を見てる。
恥ずかしい。怖い。逃げ出したい。
……でもここで逃げたら、私これからもすべてから逃げていく気がする。
大きく息を吸い込んで、私は言葉を絞り出した。
「水無月 隼人さん」
思ったよりはっきりと声が出て、少しだけ冷静さを取り戻した。
頭の中に浮かぶのは自信に溢れた高慢な笑み、私をからかう妖艶な瞳。タブレットと向き合う真剣な横顔。お腹がいっぱいになってベッドにもたれてうとうとしちゃう寝顔。
大切な……彼の全部。
「好きだって言ってくれたのに、私もって言えなかった。
いつも大切にしてくれたのに、信じられなくて、勇気がなくて。
……好きです。隼人さんが大好き……」
「イベント5時までだよね。急がなきゃ」
バクバクする心臓に落ち着け、落ち着けと言い聞かせる。
遠くに見えたステージまでの距離はあっという間で、震えだしそうな足で地面を踏みしめる。
「私達はここまでね」
V5に背中を押されて、私はステージ横の受付に声をかけた。
「あの……まだ間に合いますか……?」
「はい?」と顔を上げた女の子は、見たことのある顔をしている。
トレードマークなのか今日もツインテール。猫目のあの子だ。
私を見つめて数秒、素っ気なく「どうぞ」とステージまでの道を開いてくれた。
何か言いたかったけれど、言葉は見つからなかった。
これからの私を見ていてくれれば、気持ちは伝わる気がした。同じ女の子として。
息が苦しくて階段が上手く登れない。
心臓が破裂しそうな思いでステージに立つ。足が地についているのかどうかすらわからなくなる。
マイクを握った中性的な男性が近づいてきて、私を見て少し眉を上げ、すぐに笑顔になった。
「本日最後の告白をしに来てくれた女の子に拍手―‼ お名前は?」
「春野……桜です」
「桜ちゃんね、それでは早速告白してもらいましょう。どうぞ」
渡されたマイクはずしりと重くて、私は震える手で落とさないようにするのが精いっぱい。
人ごみをかき分けて和香と龍君が目の前に来たのが目に飛び込んできた。
「桜ちゃん、頑張って!」
和香が涙を浮かべて私を見てる。
恥ずかしい。怖い。逃げ出したい。
……でもここで逃げたら、私これからもすべてから逃げていく気がする。
大きく息を吸い込んで、私は言葉を絞り出した。
「水無月 隼人さん」
思ったよりはっきりと声が出て、少しだけ冷静さを取り戻した。
頭の中に浮かぶのは自信に溢れた高慢な笑み、私をからかう妖艶な瞳。タブレットと向き合う真剣な横顔。お腹がいっぱいになってベッドにもたれてうとうとしちゃう寝顔。
大切な……彼の全部。
「好きだって言ってくれたのに、私もって言えなかった。
いつも大切にしてくれたのに、信じられなくて、勇気がなくて。
……好きです。隼人さんが大好き……」