嘘つきには甘い言葉を
「桜が来週にでもご飯行きたいなって言うから、誘いのメール送ろうと思ったんだ。どうかな?」
涙目で彼を見上げたら、いたずらが成功した子どもみたいな瞳と目が合った。
「もちろんいいっすよ。また予定見て連絡します」
「ああ、またね」
いつの間にか彼の足元に崩れ落ちていた私は、屈んだ彼に顎を持ち上げられる。
「じゃ、今晩楽しもうか」
ファーストキスは、何の味もしなかった。
20歳の今日までどうして一度もしなかったんだろう、と思うくらいにあっさりと唇は奪われていた。
「やっ……」慌てて彼を押し退けようとするけれど、逆に腰を引き寄せられて立たされる。男の人の力の強さを感じたのは初めてだった。次の瞬間私の背中は柔らかいマットレスに受け止められていたから。
私の上に跨がって、彼は「抵抗する? しないよな」と妖艶な笑みで覆い被さってくる。
早すぎる展開に全くついていけない。
今日会ったばかりの人とキスしてる。
ありえないでしょ。
拒めないのは龍君と和香に別れて欲しくないから。
それだけ……。
それでいいの?
熱くて柔らかい舌にこじ開けられて何も考えられなくなる。好きでもない人としてるのに、相手は龍君じゃないのに、キスがこんなにも気持ちいいことを初めて知った。
停止した思考のまま勝手に事は運んで、恥ずかしさも気持ちよさも限界を超えていた。
塞がれていない時には唇から自分のものとは思えない甘い声が漏れる。
慣れた手つきで私を翻弄しながら、彼は面白そうに、馬鹿にしたように笑った。
「なんだ、ちゃんと感じてんだ。大丈夫。抱くときは優しくするって決めてるから」
その後も彼は優しかったけれど、肝心な時になって私は悲鳴を上げた。
「やっぱり……無理‼」
我慢しきれずに頬を流れた涙をきっかけに、抑えていた感情が溢れだす。
投げやりな気持ちでこんなことをしている自分が堪らなく嫌になる。だけど目の前の人は、悪魔的な笑顔を浮かべたままだ。
「友達の為に自分を犠牲にすることに決めたくせに。ほら、友達の為に我慢なんて出来ないだろ。やめて欲しいならやめてやるよ。あいつらは別れるかもしれないけど……お前のせいで」
ここでやめたら、和香と龍君は別れるの?
「なぁ、桜。こないだ会ったお前の友達、紹介してくれない?」照れながら言った龍君を思い出す。
幼稚園からの付き合いで、龍君のあんな表情を見たのは初めてだった。
「龍君ってすっごい焼きもち焼きなんだよ。サークルの友達と話してるだけでも嫌な顔するの。まぁ、そこも好きなんだけど」なんてにやけてた和香が頭に浮かんだ。
胸がちくりと痛んだけれど、これは友情なんて清らかなものではないけれど、それでも私は二人に別れて欲しくない。
涙目で彼を見上げたら、いたずらが成功した子どもみたいな瞳と目が合った。
「もちろんいいっすよ。また予定見て連絡します」
「ああ、またね」
いつの間にか彼の足元に崩れ落ちていた私は、屈んだ彼に顎を持ち上げられる。
「じゃ、今晩楽しもうか」
ファーストキスは、何の味もしなかった。
20歳の今日までどうして一度もしなかったんだろう、と思うくらいにあっさりと唇は奪われていた。
「やっ……」慌てて彼を押し退けようとするけれど、逆に腰を引き寄せられて立たされる。男の人の力の強さを感じたのは初めてだった。次の瞬間私の背中は柔らかいマットレスに受け止められていたから。
私の上に跨がって、彼は「抵抗する? しないよな」と妖艶な笑みで覆い被さってくる。
早すぎる展開に全くついていけない。
今日会ったばかりの人とキスしてる。
ありえないでしょ。
拒めないのは龍君と和香に別れて欲しくないから。
それだけ……。
それでいいの?
熱くて柔らかい舌にこじ開けられて何も考えられなくなる。好きでもない人としてるのに、相手は龍君じゃないのに、キスがこんなにも気持ちいいことを初めて知った。
停止した思考のまま勝手に事は運んで、恥ずかしさも気持ちよさも限界を超えていた。
塞がれていない時には唇から自分のものとは思えない甘い声が漏れる。
慣れた手つきで私を翻弄しながら、彼は面白そうに、馬鹿にしたように笑った。
「なんだ、ちゃんと感じてんだ。大丈夫。抱くときは優しくするって決めてるから」
その後も彼は優しかったけれど、肝心な時になって私は悲鳴を上げた。
「やっぱり……無理‼」
我慢しきれずに頬を流れた涙をきっかけに、抑えていた感情が溢れだす。
投げやりな気持ちでこんなことをしている自分が堪らなく嫌になる。だけど目の前の人は、悪魔的な笑顔を浮かべたままだ。
「友達の為に自分を犠牲にすることに決めたくせに。ほら、友達の為に我慢なんて出来ないだろ。やめて欲しいならやめてやるよ。あいつらは別れるかもしれないけど……お前のせいで」
ここでやめたら、和香と龍君は別れるの?
「なぁ、桜。こないだ会ったお前の友達、紹介してくれない?」照れながら言った龍君を思い出す。
幼稚園からの付き合いで、龍君のあんな表情を見たのは初めてだった。
「龍君ってすっごい焼きもち焼きなんだよ。サークルの友達と話してるだけでも嫌な顔するの。まぁ、そこも好きなんだけど」なんてにやけてた和香が頭に浮かんだ。
胸がちくりと痛んだけれど、これは友情なんて清らかなものではないけれど、それでも私は二人に別れて欲しくない。