ポイントカードはお持ちですか?
会議は滞りなく終わった。
伊月君が持つ案件は厄介なものも多いけど、彼の用意周到な仕事ぶりゆえにこちらが困ることは少ない。
今回も頭を抱えて帰ったのは業者さんの方だった。
その少ししぼんだ背中を見送って自分も帰ろうとすると、
「咲里亜さん、富樫君から聞いたよ。クリスマスイブに約束したんだって?」
と、場所に不釣り合いなほどウキウキした声で課長が話しかけてきた。
用地課の谷口課長も、何より伊月君もいる場所で本っ当にやめてほしい!
しかも何が悲しくて50代の課長と30歳の私が恋の話をしなければならない!
「約束というほどのものではありません。『お付き合いするならば会いましょう』というお話で、何も決まっていないんです。変な期待しないでくださいよ」
「だけどお互い好印象だったって聞いたよ。そういうことになれば、紹介者としてはとても嬉しいんだけど」
「富樫さんに悪印象を持つ人なんていないでしょう。仕事に戻りますよ!」
面倒臭いな!
だから紹介なんて嫌だったんだよ。
私と課長の短いやりとりの間に、谷口課長と伊月君は後かたづけをして帰ってしまっていた。
ため息とともに心が沈む。
伊月君の行動に一喜一憂・・・いや、一憂一憂させられるのは疲れる。
もう帰りたい。
だけど簡単に仕事を放り出して帰れないのが社会人で、大体において嫌なことは重なることが常なのだ。