ポイントカードはお持ちですか?
庁舎に入ろうとしたとき、ポケットに携帯が入ってないことに気づいた。
「伊月君、ごめん。車の鍵貸してくれる?携帯忘れたかもしれないの」
「呼び出した方が早く見つかりますから、一緒に戻ります」
「ごめん。ありがとう」
伊月君に呼び出してもらって音は聞こえるのに、パッと見た限り携帯は見えない。
音を頼りに座席の下をのぞき込むと、奥の方に入り込んでいた。
呼び出してもらわなければ、少し時間がかかったかもしれない。
「あったあった!」
手を伸ばして取り出し、『着信 伊月洸』の文字にときめきながら通話を切る。
その時、車を離れようとした私の両肩がガシッと掴まれ、右耳のすぐ近くでジュウウウウウウウッという音がした。
同時に首とも背中とも言えるあたりにものすごい痛みが走る。
「いっっっったーーーい!」
瞬間的に痛みのする方に顔を向けると、顔にサラサラとした髪の毛が当たった。
「お疲れさまでした」
私の首筋から離れた伊月君は、立ち尽くす私を残して淡々と車に鍵をかけ、さっさと庁舎に戻って行った。
・・・・・・はい?
え?今の何?
そっと痛みのした部分に手を当ててみるけれど、特にもう違和感はない。
だけど・・・・・・。