ポイントカードはお持ちですか?
そう思ったからといって悟りを開けるわけではなく、心は常に乱される。
「風見さん、お疲れさま」
「お疲れさまです。あ、ポット空でしたか?すみません」
「いいの、いいの。休憩のついでだから」
職員のカップを洗っていた手を止めて私からポットを受け取ろうとするから、それを制止した。
真面目で一生懸命でかわいい風見さん。
伊月君にも風見さんにも幸せになってほしいと思う。
嫉妬する気持ちはもちろんあるけど、幸せを願う気持ちも本当。
それが純粋な善意なのか、「失恋した相手の幸せを願える自分」でいたいだけなのかはわからない。
だけど、偽善だっていいって伊月君が言ったのだ。
偽善の100円も純粋な善意の100円も、価値は一緒だって。
だったら、私の偽善の願いにも、価値はあるはずだ。