ポイントカードはお持ちですか?
とりあえず豚の角煮と出汁巻き卵とポテトサラダと焼おにぎりを注文する。
厨房にオーダーを通したママは相変わらず忙しそうにお酒を用意している。
「ママ、そのお酒できたら私が運びましょうか?」
一人で手持ち無沙汰にしていると居心地が悪くなってきてそう提案した。
「お客様にそんなことさせられないわ」
「別に気にしなくていいですよ。どうせそれ課長のテーブルでしょう?運んで空グラス下げるくらい、ただの暇つぶしだから」
カウンターの中に入って洗い物をしたりお酒を作ったりはできないけど、運ぶくらいなら問題ない。
ママは珍しく悩んでいたが、余程手が足りなかったのか、
「ごめんね。お願いできる?」
と、4つグラスが乗ったトレイを私の目の前に置いた。
「失礼します。みち子ママじゃなくて申し訳ありませんが、ご注文のお酒です。どれが何かはわからないので、とりあえずまとめてここに置きますね」
空いたグラスを回収してカウンターに戻ろうとすると、課長が「咲里亜さん」とモジモジしながら呼ぶ。
50代おっさんのモジモジに嫌な予感はしつつも無視するわけにいかず、聞く姿勢を整えた。
「咲里亜さんはいつも陰日向なく働いてくれて、常々感謝しているんだ」
「ありがとうございます」
陰日向なく自分の仕事しかしてませんが。
「明るくていい子だなー、と思うし、あなたには是非幸せになってもらいたい」
「・・・ありがとうございます?」
「それでね、とってもおすすめしたい男がいるんだよ。いや、年齢は確かに45歳と離れているんだけど、仕事一筋で適齢期を逃しただけで問題があるわけじゃない。むしろ人間として彼以上に誠実な人を私は知らない。私は彼にも幸せになってもらいたい」
「・・・・・・はあ」
「一度、会ってみませんか?」
「・・・・・・・・・」