ポイントカードはお持ちですか?
「咲里亜さん、クリスマスプレゼントです」
言葉の内容とはまるで違う無表情で伊月君がやってきた。
それでもドキドキしてしまう。
だけど手には何も持っていない。
「例の地権者の方から連絡があって、今日の夕方なら会ってもらえるそうです」
ずーっと連絡がつかなかった人がいて、伊月君は先日ご自宅まで行ったもののやはり留守だった。
その時ポストにメモを残してきたのだが、それを見て連絡をくれたらしい。
やっぱり最後はアナログが強いね。
「17時以降なら、ということで約束してしまったのですが、行けそうですか?」
「大丈夫。行くよ」
「帰りは少し遅くなってしまいますが・・・」
「仕方ないよ。行って、ここで決めてしまいたいし」
その方は山を越えた隣県に住んでいて、片道1時間半ほどかかる。
17時から交渉を始めて、交渉1時間、復路1時間半、戻りは19時半になりそうだ。
遅いけど大した時間じゃない。
チクッと心に刺さるものがあった。
大した時間じゃないけど、クリスマスイブに伊月君を独占できるって思ったからだ。
コピー機のところで資料作りをしている風見さんに視線を向ける。
彼女に謝る必要はない。
だってこれは〈仕事〉だから。
「それと、同行してもらえるなら咲里亜さんの車を出してもらえませんか?遅くなるから公用車じゃない方が色々便利かと思って」
「いいけど、伊月君の車は?」
「車検に出してて、今日は自転車で来ました」
「わかった。私用車使用で申請しておく」
「よろしくお願いします」
「伊月君がくれるプレゼントはいつも残業だね」
風見さんは、彼から何をもらうんだろうか。