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お祝いなので、豪華にランチバイキングをしているイタリアンのお店に行った。
パスタ、ピッツァ、サラダ、軽食、ドリンク、それからデザートまで全部食べ放題!
1時間しかないお昼休みに来るには贅沢だ。
「改めて、就職おめでとう。貿易会社なんてすごいね」
「ありがとうございます。本当に小さな会社なので全然すごくないです」
「何を扱ってるの?」
「爪楊枝です」
「へええええ!」
ちょっとマニアックというか、想像もできないような世界だった。
当たり前だけどそういう会社が世の中にはたくさんある。
私の見えている世界なんてごくごく一部なのだ。
「咲里亜さん、すみませんでした」
具体的な部分を省略していても、何のことを言っているのかはわかる。
「風見さんは悪くないよ。私の発言がいい加減だった。不用意に傷つけるようなこと言って、こちらこそごめんなさい」
「いいえ。あれは、ほとんど八つ当たりだったんです。それなのに咲里亜さんは変わらず接してくれて嬉しかったです」
内心結構ビクビクしてましたよー。
必死でなんでもない顔を作っていただけで。
と、心の中では思いつつ、その〈上手な何でもない風の微笑み〉を風見さんに送った。
「あの辺り就職も決まらなくて、失恋もしてしまってイライラしてたんです。それで何でも揃ってる咲里亜さんが羨ましくてつい・・・」
「何でもなんて揃ってないよ!本当に仕事くらいしかないもん。風見さんに言われて自分の恵まれてる部分をもっと大事にしようって思えた。むしろありがとう」
風見さんはいつものふんわりとした笑顔を浮かべた。
いつもより少しさみしそうに、そしていたずらっぽく。
「伊月さんが咲里亜さんを好きになるのも当然ですね」