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「信じられます!?伊月さんを食事に誘ったら〈サードゴロ〉に連れて行かれたんですよ!?こっちはねー、少ない給料の中から頑張ってかわいいワンピース買って、わざわざ着替えて行ったっていうのに、仕事帰りの作業着のまま!すみません、コーヒーとショートケーキおかわりしてきます」

デザートメニューがものすごく豊富なので、私と風見さん(今日はダイエット解禁だって)は、パスタやピッツァもそこそこにデザート制覇に乗り出した。

今は、二巡目である。

「私と仕事終わりで食事するときも作業着だから、そこに何の意味も込められてないと思うよ。あ、シフォンケーキ追加された!」

「伊月さん、本っ当に女心なんて欠片もわかってないです。わかろうともしないと思います。きっとプロポーズもなしで、ぬるーっと結婚に持ち込む気ですよ。そういうの許せない!このプリン、すっごく濃厚です」

「ぬるーっとでも結婚できればいいと思ったけど、やっぱり寂しいよね。一生に一度くらい、プロポーズされてみたいなあ。あ、箸や休めにゼリー食べようかな」

「プロポーズのない結婚なんて、パイナップルのショートケーキみたいなものですよ」

「・・・悪くないと思うけど?」

「ショートケーキはイチゴじゃないとダメです。値段が高くてもメロンや桃でもダメなんです。見た目でときめかないと」

「ときめきは大事よね」

「旬じゃない、固くて味のうっすーいイチゴでもイチゴの乗った結婚がいいです。もう一回ショートケーキ食べますね」

「結婚はともかく、もうこのこそこそした生活にも疲れてきちゃった。いっそ早く異動してくれないかなー。あ、シフォンケーキがラスト2つ!」


風見さんとはもっと早くこうなりたかった。

胸焼けするほどお腹も心もいっぱいだ。


勝者の余裕ではなくて、本当に心から彼女の幸せを願う。





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