ポイントカードはお持ちですか?

「咲里亜さんはあんまり気にして文書作ってないですもんね」

「だって、どうせ班長と課長がチェックするじゃない。その後で直した方が効率いいんだもん」

「最初咲里亜さんの文書見たとき『ひどいな』って思って、大きなミスを見つけたら指摘してやろうと思ってたんです」

おいおい。怖いよ~。
あれ?でも大したこと言われた記憶ない。

「だけど咲里亜さん、肝心な部分は絶対ミスしてないんです。内部向けの文書は本当に適当なのに、外部に出す文書にミスはない。取捨選択が上手なんだと思いました。ちょっとうますぎますけど」

「さすがに外部に出すものはチェックするもん。そこをちゃんとやるのは当たり前じゃない?」

「違います。咲里亜さんは自分で言うほど適当な仕事してないです。田山課長だって厄介な案件ほど咲里亜さんに振ってます」

「あ!やっぱり?薄々そうなんじゃないかなーって思ってたんだよ。えー嫌だなー」

チラリと課長の方に殺気を送るものの、縁談の話をぶり返されたくないので接触は控えた。

「ちゃんとやればできる人なんです。内部向け文書だって誤字脱字以外はさほど問題ないですから。ただ単に見た目が美しくない、というだけで」

美しくない、ときたかー。
そこに美学を持ってないから仕方ない。
だって残業しないで早く帰る方が私にとってははるかに重要なんだもの。

「俺が気にし過ぎなのはわかってるんです。何やるにも要領悪くて、何も器用にできない」

「伊月君の仕事は確かに几帳面過ぎるけど、他人にそれを求めるわけじゃないし、期日にはきちんと間に合わせてるし、別にいいんじゃない?伊月君の無駄にきれいな文書、私は好きだよ。同じクオリティを求めてきたら嫌いになるけど」
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