ポイントカードはお持ちですか?
「諦めない方がいいと思います」
足下に置いていた黒いリュックサックをゴソゴソ漁りながら伊月君が言う。
「『仕事に生きる』とか『彼氏は作らない』とか、事実だとしても聞いている方が悲しくなります。『結婚したい』って素直に言えている方がずっとかわいいです」
ガサリと私の目の前にコンビニのビニール袋が置かれた。
中身は、普通の焼きプリン。
「誕生日に残業させてしまったお詫びです。昔からある定番のやつだから、素材の味はちゃんと死んでると思いますよ」
あ、昼間の話か。
うん、確かにこのプリンは大好きだ。
伊月君は本当に食事をしに来ただけだったようで、3千円をカウンターに残して帰っていった。
「多いよ」と返そうとしたけど、「小銭邪魔なんで」と断られてしまった。
邪魔だからなのか、カウンターの隅にポツンと置いてあった募金箱に小銭を入れていった。
そんなところに募金箱なんてあったんだな。