ポイントカードはお持ちですか?

チラリと視線を上げて伊月君を見るけど、伏せた目では眼球は見えない。

伊月君とはたまにこうして食事を一緒にするのに、こんなに意識したことなかった。

相席・・・よりはもっと親しいながら、仕事の流れ以上のものはない。
いつも「おいしい!」とか「いまいち~」とか、食事の内容に集中できていた。

今は大好きなキスの天ぷらもいつの間にかなくなっていたくらい、違うことばかり考えている。

だけど今まで、食事に集中できるくらい居心地はよかったんだよね。
おいしくても、そうでなくても、楽しかったから伊月君との食事は嫌じゃなかった。


何を食べるかは重要だけど、居心地よく食事するってことはもっと重要。

つまり、誰と食べるかってことは、何よりも重要なんだ。



「ごちそうさまでした」

遠慮なく奢ってもらったので、きちんとお礼を言う。

「いいえ。こちらこそ手伝っていただいてありがとうございました」

庁舎に戻ってそこで別れる。

これまで何度もこんな場面はあったのに、広い駐車場がいつもより広く寂しく感じた。





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