ポイントカードはお持ちですか?

カップで出てくるタイプの自動販売機でココアを買う。

仕事中はあまーいのが飲みたい。
あまーい言葉とかでもいいですよ(イケメン限定で)。

だけど今一番欲しいのは部長のあまーい評価だな。


ココアができあがるまでの数十秒、少しでも目を休めようと目を閉じた。
あークラクラする。

ココアができあがったと音でわかったけど、目を開けたくない。
このまま眠ってしまいたい。


・・・・・・・・・


「咲里亜さん」

肩を掴まれてビクッとする。
なんか一瞬寝ていたように思える。

「大丈夫ですか?」

心配したように伊月君が言う。
この人でもこういう表情することあるんだな。

「あー大丈夫大丈夫。ちょっと・・・寝てただけ」

ココアのカップを取り出す。
まだ熱いから、長い時間寝ていたわけではないようだ。

「今、ちょっと時間いただいていいですか?」

「うん、いいよ」

課の方に戻るかと思ったのに、伊月君はまったく反対方向に歩き出した。
スタスタ歩く背中をココアをこぼさないように気をつけながら、少し早歩きで追う。

伊月君は突き当たりの非常階段脇で止まった。

「あれ、見てください」

窓の外、右の方をのぞき込むようにしながら言うので、私も同じように窓に近づいて右を見た。


< 32 / 143 >

この作品をシェア

pagetop