ポイントカードはお持ちですか?
「もっといいものにしたら?」
「それがいいんです」
「もしかしてものすごく高いの?」
「200円だったと思います」
「遠回しに断ってる?」
「いいえ。来週の日曜日にでもごちそうしてください」
どうやら、本当の本当にソフトクリームを所望しているようだ。
「公用車でソフトクリーム屋さんに寄るのは気が引けるし、休みの日に一人で行くには少し抵抗があるので」
「ああ、なるほど」
お金の問題じゃなく、食べたいけど食べにくい、ということらしい。
確かに男一人でソフトクリームって勇気がいるかもしれない。
「咲里亜さん、この後大丈夫ですか?」
「え?ソフトクリームは来週の日曜じゃないの?」
「用地交渉です。同行してもらえるように言ってありましたよね?」
見えない視線がカーテン越しに刺さってきた。
仕事中でしたね、すみません。
「大丈夫。準備できてるからもう行けるよ」
「じゃあ、公用車を正面に持ってくるので出て待っていてください」
後ろ姿がパーテーションの陰に消えたのを見送ると、ふうううっと心臓の力が抜けた。
私、ずーっとドキドキしっぱなしだった。
30になったいい大人なんだから、これが何かはもうわかる。
わかりたくないけど、残念ながらわかる。
あーーーー、困った!
伊月君を、好きになってしまった。