ポイントカードはお持ちですか?

せっかくだからキャンディーをひとつ口に入れる。
外装はオレンジ色だったからオレンジ味かと思ったら、中身は緑色。

結局何味なんだ?・・・うーん、漠然としたフルーツ味?
まあ、いいか。


「せめて何か自分にプレゼントでもしたら?」

「もう何が欲しいのか・・・。奇跡的に物欲も鳴りをひそめてるんです」

「欲がないのね」

「欲はあります!一番欲しいのはトキメキですから!恋愛日照りがひどすぎて、寒さの夏をオロオロ歩いてます!」

「日照りのときは涙を流すんじゃなかったっけ?」

「どっちだっていいです。どっちにしたって悲しいのは一緒ですから」

「適当だなー。トキメキなら、私のお気に入りDVD貸そうか?」

「韓流イケメンではトキメけないんですー」

じゃあ何ならときめくのか。
それがわかったら苦労はしていない。
いや、別に今でも苦労はしていない。
しないといけないんだけど。


どうでもいい話に茶色い花を咲かせていたら、もう間もなく始業時間になっていた。

朝から山だ。
準備が出来次第出発予定。

「咲里亜さん、出られます?」

「はい。行けますよー」

伊月君に声を掛けられて席を立つ。

名前で呼ばれているのは親しさゆえではない。
単純に〈中村〉っていう名字の人が、部内に3人もいるからだ。

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