ポイントカードはお持ちですか?
5 あなたは一体誰ですか?
なぜそんな彼がわざわざ日曜日に私とソフトクリームを食べにいくのか。
理由はすでに聞いていた。
一人で食べに行きにくいからだ、と。
嫌いな相手とわざわざ休日に出かけるかな?
それとも嫌われていると思ったのはやっぱり私の思い過ごし?
普通、嫌い、普通、嫌い・・・待ち合わせのコンビニ脇に咲いている花で花占いでもしてやろうかと考えて、やめる。
この花びらの数だと必ず「嫌い」で終わってしまうから。
好きな人との初デート(ということにする)。
何を着ようか数日前からさんざん悩んだのだけど、行くのは山の中だし、何でもない誘いに対して浮かれすぎた格好をしていくのは恥ずかしいので、結局デニムにオレンジベージュのニットを着た。
広めに開いた襟元につけたお気に入りのゴールドのネックレスにひそかな乙女心を込める。
いつもは結んでいる髪がふわりと揺れたと思うと、見かけたことのある黒いコロンとした車が私の近くに停車した。
伊月君と同じ車だから身構えたのに、降りてきたのは別人だった。
それでもすごい勢いで心臓がドキドキする。
伊月君だ、と思っただけでこうならば、本人が現れたときには一体どうなってしまうのだろう。
「おはようございます」
気持ちを落ち着けるために足下をチョコチョコ動くアリを見つめる。
こんなにじっとアリを観察したのって、小学校以来かもしれない。
「おはようございます」
アリの動きは素早いが、目的地がわからないのか、何かを探しているのか、フラフラと安定しない。
それとも餌の匂いをたどっているのだろうか?
「・・・おはよう、ございます」
私が見る範囲でアリの餌になりそうなものは見えないけど、単純に巣に戻るところなのかもしれない。
何か手土産を持たせてあげたい気もするけど、今あげられそうな餌はない。
「咲里亜さん!」
いきなり名前を呼ばれてびっくりして顔を上げた。
「おはようございます。お待たせしました」