ポイントカードはお持ちですか?
「ど、どうしたの?髪?」
驚きなのか、違う理由なのか、ドキドキしていた心臓は容量をオーバーしたようで硬直してしまったらしい。
呂律もあやしくなってしまった。
「切りました」
いやいやいやいや、そういうレベルじゃないでしょう!
「ふ、服は?」
「さすがに休みの日まで作業着では来ませんよ。咲里亜さんだって、職場とは違うじゃないですか」
私の変化はごく一般的です!
「行きましょうか」
助手席のドアを開けられて「ど、どうも」とか何とかモゴモゴ言いながら乗り込む。
公用車が使えないとき、伊月君の私用車には何度か乗ったことがある。
伊月君の運転する車、という意味ならもうそれは何度も何度もある。
だけど今日は、過去最高に乗り心地が悪い。
座り方を忘れてしまったみたいに、手の位置、足の位置、視線の方向、どれもこれも定まらなくて落ち着きなくモゾモゾ動いてしまう。
「座り心地悪かったら調整してください」
「あ、うん。大丈夫」
そう言われてしまうと動くこともできなくなり、まるでロケット発射を待つ宇宙飛行士みたいに(いや、彼らの方がずっとリラックスしていると思う)カチッと体を硬直させたままひたすら窓の外を眺めていた。
といっても、窓ガラスに映る伊月君をじっと見つめてしまって景色はまったく見えていない。