ポイントカードはお持ちですか?
はああ、格好いい・・・。
すでに恋には落ちていたけれど、その底にはさらに深みが広がっていたらしい。
底なしの泥沼にはまったように、小気味いいほどズブズブ彼に溺れていく。
今彼がフリーなのは、ひとえに本人が恋愛に興味ないせいに違いない。
27歳、公務員、この見た目。
性格は真面目で仕事熱心。
お酒は適度にたしなむけど、タバコとギャンブルはやらない。
これはリアルな世界の中ではもう〈高嶺の花〉ではないか!
なんだよ、もう。
マズいのに引っかかっちゃったよ。
ドキドキしすぎて鼓動を自覚することも困難になっていた気持ちがスウーーっと冷める。
ますますもって私ではダメだ。
今後は伊月君に話しかけるだけで〈身の程知らず〉のレッテルを貼られてしまいそう。
伊月君から故意に視線をはずして、半分ほど紅葉のすすんだ山々を眺めながら車通りのない一本道をひたすら進む。
いつも何を話していたのか、もう全然思い出せない。
伊月君が口をきくのもはばかられるほど遠い存在になってしまったみたいだ。
黙りこくる私に、伊月君の方も話しかけてくることはなかった。