ポイントカードはお持ちですか?
守口精乳店は一本道の脇に突然現れる。
近隣に他の建物はないから嫌でも目に入るけど、一般の人が入っていいとは知らなかった。
従業員が雑に停めているような大雑把な駐車場に、伊月君は隣の車の位置に合わせてキチンと駐車した。
その駐車場の脇に、手作りの看板で「ソフトクリーム200円」とある。
看板横にサッシのドアがあり、その中で販売しているらしい。
カラカラカラカラ。
サッシを開けても誰もいない。
「御免ください」
伊月君が声を掛けてもウンともスンとも返事はない。
「誰もいないのかな?」
「いえ、大体いつもこんな感じです」
そういうと、奥に向かって改めて大きな声を張り上げる。
「すみませーーーん!」
すると、その方向でバタバタと足音がした。
「はいはーい。いらっしゃいませー」
悪びれるでもなくおばさまはニッコリ笑って言った。
「2つ?」
「はい」
「400円ね」
伊月君がポケットのお財布に手を伸ばしたのが見えて、慌てて前に出る。
「私がお礼する約束だよね?」
400円・・・。
あはは、むしろ気まずいくらいの額だ。
1000円を渡して600円受け取ると、おばさまは慣れた手つきでクリンクリンとソフトクリームを2つ作った。
「はい。ありがとうございましたー」
おばさまにお礼を言って外のベンチに座る。
ひとつきりしかない、塗装の剥げた赤いベンチだ。
確かにここに一人で座ってソフトクリームを食べるというのは、少し勇気がいるかもしれない。
例えたった一人で他に見ている人がいないとしても。