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バタフライ効果というほどではないが、伊月君の変化の余波は思わぬところからやってきた。


翌日、月曜。

重い気持ちを脚とともに引きずって出勤してみると、伊月君はいなかった。
部内の予定によると、本庁で会議と研修があるそうで3日間出張らしい。

元々机の位置関係が背中合わせだから顔は見えないのだが、背中が軽い。

仕事に集中して嫌なことから無事逃げきったかに思えた昼休み、携帯に新着メールが届いた。
有紀からだ。

『ちょっと、サリ!今日会議でこっちに来てる伊月って、あんたのところの人だって?誰?何者?』

福祉部である有紀が仕事上で伊月君に会うとは考えにくい。
嫌な予感がする。

『伊月洸君。27歳で用地課の職員だよ』

『そんなこと知ってる!あんな格好いい人いた?』

『格好いいって、顔立ちは普通だよ』

『顔のパーツひとつひとつの話してるんじゃないよ。パッと見の話』

『そんなの真のイケメンとは呼べない』

『真のイケメンである必要ないでしょ。大雑把に格好よければ問題ない』

『それだと産まれた子どもはイケメンにならないよ?』

『伊月君の子ども産むの?』

『違うけど』

『だったら関係ないじゃない。ずいぶん冷たいけど、伊月君って性格が悪いとか何か問題ある人なの?』

『真面目で仕事もできるいい人だよ。私も何度も助けてもらってる』

『うちの臨時の子が騒いでるんだよ。親しいなら今度紹介してあげて』

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